数年前、カナダ旅行でトロント市内観光の途中、バスでトロント大学の周りを一周した。
トロント大学は、アグネスチャンが留学した大学という以上に私にとっては重要な場所。
世界ではじめてインスリンが発見されたのがこのトロント大学。

もしも、インスリンが発見されていなかったら、私のようなIDDM(1型糖尿病)患者は発症後まもなく死ぬというのがそれまでの患者のたどる道だった。
バスの中でガイドの説明を聞きながら、感慨深くその場所を見ていた自分をよく覚えている。

そしてそれから数年たった今、本来ならば感謝してもしきれないのだろうが、中途半端な発見をしてくれたものだなという考えもないわけではない。
注射でインスリンを強制的に体内に注入しているわけで、悪く言えばこれは対症療法に過ぎない。インスリンが再び体内で生産されるようになるという根本的な治療ではない。

頻繁に血糖値を測定しながら、曖昧な経験則でインスリン注射量を決め、高血糖と低血糖のはざ間をかいくぐりながら、それでも確実に症状は悪化してゆく、というのが現実。
特に低血糖については、放置すると意識がなくなり、やがて昏睡状態になるという脅迫観念がつきまとい、精神衛生的にもよくない。

しかしそんなに悲観ばかりすることもないのだろう。
もっと効率的なインスリン注射が開発されるだろうし、膵島(すいとう)移植のような根本的な治療法が一般的になるかもしれない。

インスリン注射で四苦八苦などという話しは、近い将来、過去の思い出になるのかも?

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